1955 / 1959 GRETSCH X6022 / Rancher 

マーティンの創業者であるクリスチャン・フレデリック・マーティンと同様に、グレッチの創業者フリードリッヒ・グレッチもドイツ移民のひとりだった。
1883年にニューヨークのブルックリンにグレッチ社を設立したフリードリッヒだったが、創業12年目に39歳という若さでこの世を去った。
会社は息子たちに引き継がれ、当初はドラム、バンジョー、タンバリンなどを生産し、1930年代以降はギターの生産を開始、40年代の後半から数多くのエレクトリック・モデルを発売した。

 グレッチの製品は、アメリカン・テイストを強く漂わせるデザインが多いが、今回はその中でもひときわキャラクターが濃い1950年代の「GRETSCH X6022 / Rancher」を2本紹介しよう。
左が1955年製、右が1959年製のX6022、ランチャーである。

 ランチャーは、1954年に登場したフラットトップ・モデルで、17インチ・ワイドの大型ボディを採用している。
トップはラミネート・スプルース、サイドとバックはラミネート・メイプルで、バックはプレスによりアーチ形状に加工されている。
ブレイシングはスタンダードのXではなく、変則的なラダー(ハシゴ状)を採用。
55年製はボディ左下の大きなGマークが施され、ピックガードの牛のデザインと共に、ウエスタン・モデルであることをアピールしている。

 左側の1955年製のピックガードはオリジナルのベッコウ柄で、1958年から右側のルーサイトゴールドに変更された。
どちらのピックガードもトップに木ネジで固定しているところが、いかにもグレッチらしい。

 どちらのネックも25-1/2インチ・スケールを採用した21フレット仕様。
55年はセンターに薄いエボニーストリップを1枚挟んだメイプル3ピース、59年は2枚挟んだメイプル5ピース。
フィンガーボードは55年がハカランダ、59年がエボニーを使用している。
55年製はブロックポジションにウェスタンモチーフが施され、59年製はサムネイルタイプを採用している。

 ユニークなデザインのローズウッド製アジャスタブル・ブリッジが採用され、メタル・テイルピースがさらに個性を際立たせている。

 グレッチではエレクトリック・ギターの他、アーチトップ、エレクトリック・アコースティック、など様々なスタイルのギターを製作し、PX6120やジェット・シリーズなど人気モデルも数多く誕生した。
しかし、フラットトップに関してはあまり人気がなく、このランチャーは数少ない人気モデルの一つである。